まるごとみんご

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ピサロ

ピサロ」を観た。

 

 

 16世紀、167人の寄せ集めの兵を率いて、2400万人のインカ帝国を征服した成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語だ。167人の兵とともにスペインを出国し、インカ王アタウアルパと対峙、生け捕りにしたアタウアルパとの交流が描かれる。

 

 冒頭、幕が上がった瞬間、大階段のてっぺんで、太陽に相対して仁王立ちするアタウアルパの後ろ姿があった。その神々しさに呼吸が止まる。そこから一気に物語の世界に引き込まれた。

舞台上の大道具は、可動式の大階段、ステージ背景をぐるりと囲むスクリーン、昇降する大きな太陽。非常にシンプルな構成なのに、スクリーンに映し出される映像や照明がプロジェクションマッピングの最高峰を行く(と思われる)巧妙さ、精緻さで、その時々に応じた情景を鮮明に作り出していた。役者陣の迫真の演技と相まって、すべてのシーンがとても印象的で、仮にセリフが意味不明な言語で語られていたとしても、間違いなく大筋は理解できるはず。ステージ上のすべてが一丸となって、圧倒的なパワーを放出していた。

 

 その中でも、印象的だったのがピサロを演じる渡辺謙さん、そしてインカ王アタウアルパを演じる宮沢氷魚さんの眼力の強さ。目力では言葉の持つ力が足りない。「眼力」だ。メデューサは宝石のように輝く目を持ち、見たものを石に変える力をもつという神話があるが、まさにそんな輝きだ。大きなステージ上では、目が占める分量なんて、砂漠の中のひとつまみの砂くらいのものなのに、そのほんのわずかな点に圧倒的な吸引力があった。

 

すさまじいアートの世界に没入した。とても貴重な時間だった。

この作品が、昨年のたった10回の上演にとどまらず、こうしてアンコール上演が実現して本当によかった。この作品のみならず、コロナ禍で止む無くお蔵入りした作品は無数にある。そんな作品達にも陽の光が当たる日がいつか必ず到来しますように。

 

☆☆☆☆☆