ファーストラヴ
「ファーストラヴ」を観た。
父親を刺殺した女子大生「環菜」(芳根京子)と、環奈のドキュメンタリー本の執筆を依頼された公認心理士「由紀」(北川景子)のトラウマを巡る物語だ。
この映画を観て、一番印象的だったのはタイトルだ。「ファーストラヴ」。何とも甘酸っぱい響きだけど、映画の本編は甘酸っぱさとは真逆。「苦さ」や「重苦しさ」といった表現がしっくりくる内容だ。でも、「ファーストラヴ」という単語とまったく無縁というわけではない。ストーリーをズバッと連想させるタイトルは無粋な感じがするけれど、ストーリーをわずかにかすめるような、チラッと何かしらの気配をほのめかすような、何とも狡猾なタイトルのつけ方だと思う。同名の小説が原作らしいので、このタイトルをつけたのは小説家さんか、編集者さんだと思うが、素晴らしいセンスだ。
その他に印象的だったのは役者さんの個性というか、存在感というか、雰囲気。
まず、北川景子さんの美しさ。怒っていても、泣いていても、ショートヘアでもロングヘアでも、とにかく何をしていても、どんな格好でいようとも、美しい。
次に、窪塚洋介さんの包容力。ワタクシ的には久しぶりの窪塚洋介さんだったが、その包容力の大きさに時の流れを感じてしまった。といっても、変に歳をとったと言いたいわけではなくて、大らかな人間の素晴らしさを改めて実感した。
最後に、芳根京子さん。サイコパスと純真さを行き来するような、あるいは共存するような、常に綱渡りのような危うさや張り詰めた緊張感がにじみ出る演技が素晴らしいと思った。
あ、主題歌を歌うUruさんの歌声も素晴らしい。「罪の声」でも主題歌を歌っていたけれど、悲しげな透明感のある伸びやかな歌声。人の心の機微を扱った映画にとってもよく合う。
☆☆☆☆