まるごとみんご

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LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~

「LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~」を観た。

演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

主演:大竹しのぶ稲垣吾郎ともさかりえ段田安則

 

脚本はフランスの女性劇作家によるものだ。翻訳劇は、とっつきにくくて小難しい印象があるが、本作は演出がケラさん。私は抵抗感を抱くどころか、最初からワクワクしていた。面白いに違いない!

その予想をはるかに超越した面白さ。まさにあっという間だった。

 

ある夜、職場の先輩夫婦(段田安則大竹しのぶ)が稲垣吾郎ともさかりえ演じる夫婦の家にディナーを食べにやってくる。そのシチュエーションが3つのヴァ―ジョンで繰り返される。

 

3つのヴァ―ジョンの違いは4人の思いやり度の違い。

最初は思いやり度0.9(エゴイスト度高め)。

2番目は思いやり度1.0(エゴイスト度ニュートラル)。

3番目は思いやり度1.1(エゴイスト度低め)。

4人の登場人物がそれぞれに他人への思いやり度を微妙に変化させながら、3ヴァ―ジョンが展開する。

 

それぞれのヴァ―ジョンにおける一人一人の思いやり度の違いはごくわずかなものだ。

でも、4人の思いやり度が交錯すると、こう。

最初:0.9×0.9×0.9×0.9=0.6561

2番目:1.0×1.0×1.0×1.0=1.0

3番目:1.1×1.1×1.1×1.1=1.4641

4人の思いやり度が交錯した結果として生み出される雰囲気には、大きな差が生じてしまう。そのありさまが、舞台上で軽快なテンポで繰り広げられる。かといって、客席への道徳的な教訓のお仕着せは微塵もなくて、観客はごくわずかな差が生み出すLIFEをひたすら堪能する。数式のような美しさと軽妙さ、演技でしか成しえない濃密さで演じ分けられる素晴らしいアートを堪能する。

 

演者が微妙に演じ分けるセリフの言い回し、間、視線、服装、仕草。そのわずかな差が生み出す雰囲気の違い。その巧妙さがとても面白い。何の予備知識もなしで観に行ったので、そのような構成だとは最初はわからなかった。しかし、2つ目のバージョンが始まってしばらくすると、「あれ?さっきと微妙に違ってる」ことに気づき、さらにタイトルと重ね合わせることで、構成に気づいた。2つ目が終わって、3つ目が始まる時には「次はどんな展開になるんだろ???」と、ワクワクドキドキ。その贅沢な刺激に脳が喜んでいるのがわかる。

 

会話の流れは、結構シビアなのだけど、それを軽妙に演じる4人の役者さんの演技にすっかり魅了される。ステージにとても近い席だということも幸いし、3つのヴァ―ジョンを大満喫。

 

ステージの使い方もユニーク。

まず、一般的に客席はステージに相対する形で配置されているが、今回は四角いステージを取り囲む形で客席が配置されている。ステージの役者さんは四方から熱いまなざしをうける仕様。さらに、地下に続く階段もあって、その階段の先には子供部屋があるという設定。その階段を何度も往復する稲垣&ともさか夫婦。タフだ。

また、ステージの中央部分は円形のターンテーブルのようになっていて、時にそのターンテーブルが回るのだが、4人の演者全員がそのターンテーブルに乗っているわけじゃなく、一人は不動エリアに立って演じていたり。その演出にも何らかの意図があるのだろうが、初見ではこれといって自分なりに納得のいく推測もできず。

 

巧妙で面白いし、演出の意図にも迫りたいし、とにかくもう一度観に行きたい思いが募るばかり。

 

星星星星星

 

それにしても、吾郎ちゃんはニットにスラックスというパパスタイルがよく似合う。